魔界水滸伝の5巻目を読んでみた

魔界水滸伝〈5〉 (ハルキ・ホラー文庫)

魔界水滸伝〈5〉 (ハルキ・ホラー文庫)

 日本人の血を引くエスパー・呉秀英は中国内陸にて謎の超古代遺跡の発掘作業に携わっていたが、ある日仲間が全員魚人間に変貌する怪異に遭遇してしまう。恋人・玲林と逃げ出した秀英は、今度は異次元に閉じ込められた村に迷い込んでしまった。狂った村人達に囲まれ絶対絶命の彼等を救ったのは、エジプトから謎の力に導かれやってきた雄介であった。雄介と邂逅した秀英は玲林と共に日本へ渡ることを決意。だが、恐るべき異変は今や、全世界にて頻発していた。

 いくら極限状況でも、愛を交わすのに真昼の砂漠のど真ん中はやめておいた方が……。いろんな意味で危険だと思うのw。
 いきなり物語の舞台が中国に飛んだので、すわ新章か?と思いきや、読み終わってみれば間奏曲のようだった今回の話。ただでさえ先住者たち、安西雄介軍団、そして葛城一族、多一郎陣営と(見た目的な意味でも)多彩な登場人物入り乱れるところに更にニューキャラクター&バックボーンが増えるのか……と思ったら二人のみの新入りでちょっと安心した。しかもわりとすぐ退場するみたいだし(おい)。
 今回出てきた、時空の狭間に永遠に閉じ込められる地獄なんてのは、栗本先生がお気に入りのシチュエーションのようで。グインでも多用されてましたな。生きても死んでもいないイリスの石がまさにそれだったし、短編で「時の凍土」「悪魔大祭」なんてもあったような。
 古き者たちの侵略というけれど、“者”と表現するには、侵略のかたちが“侵略”というより“事故”もしくは“災害”に近いような。“災害”というのも“自然”による“侵略”ではあるのだけれども。言葉はもちろん、人の感覚で決して通じぬ計れぬ存在、というのがクトゥルーの恐ろしさであり肝なのでしょうかね。