グインサーガの全153冊を読み終えて改めて諸々

 先日ようやく大作「グイン・サーガ」を読み終えることができました。読み始めたのが09年の4月中旬で、読了したのが12年のGWだからほぼ3年かかったことになるわけで(その間、数ヶ月にわたる「休止」も挟んだけどw)。正直、終盤はろくに感想を書く意欲も出てこない程に自分の中でダレてしまったりもしたのですが(汗)、100巻以上読むとさすがに湧いてくる一部の登場人物への愛着に引きずられて最後まで読むことができたって感じです。以下、読み終えて改めて思うこと感じたこと全体的な印象等をつらつらまとめ。各巻の感想と被る、もしくは逆に時間が経過した為に読んだ直後とは真逆なことを書いているかもしませんが〈汗)、ご了承下さい。

  • 一番好きなキャラはやっぱりグイン。全編通して、殆どその立ち振る舞いに引くことが無かったキャラでした(イシュトヴァーンにマルス伯達を殺す役目を押し付けるなんて展開もあったけど……生き残るための手段ではあったし、気にはしてるような言質もあったし)。言動もいちいち大きくうなずけるものが多かった。「『魂の強さ』などそれを元来備えていたからといってそれを誇ったり、心の弱いものをやみくもに責めるものではない」「ノスフェラスは文明から荒野になったがそれでもそこで営みを続ける者たちがいれば形が変わっただけで命の躍動していることには変わりない」とかね。なんであれほど好漢を生み出せる作者があとがきではあんな感じに……。あと、彼が主役のエピソードはだいたい楽しくスイスイ読めた。シルヴィア絡みの終盤は悲しかったが、悲恋を背負うのもまたヒーロー的にはオイシイ要素であったりするし(こら)。
  • と、いうわけで印象に残っている話はグインが主役のケイロニア陰謀〜第一回ユラニア遠征編、シルヴィア救出篇、タイス編。アムブラ弾圧編。ノスフェラスの秘密を背負ったスカールがパロでナリス&レムスと対決する話。煙とパイプ亭でグインとカメロンが対面する話。グインとリンダがお化け屋敷と化したクリスタルパレスから脱出する話。
  • 特にグインが黒曜宮の陰謀を暴く〜黒竜将軍に就任する辺りは本当に面白かった!適度に先の見える展開で実際その通りに話も進んでくれたし(30巻を超えた辺りから「アレ?」と思うようになった)、マリウスも好色ながらも気概のある若者だったし、グインとシルヴィアも出逢ったばかりで惹かれあってる一番良い時期だし(涙)。あ、あと悪役がちゃんと相応しい最後に落ち着くのもスカッとしたので。
  • シルヴィア救出篇とタイス編は単純に冒険活劇ものとして楽しかった。確かに描写が助長しまくり(特にタイス!)ではあったが、飛ばして読めば問題なーし!この2編に共通してるのは、好きなキャラばかりが登場して、嫌いな、もしくは苦手なキャラは殆ど出てこないという点にアリマスナ。なんて単純な自分w。マリウスについても、グイン始め剛の者たちが集結するエピソードの中では彼のような軟弱系歌舞音曲系がアクセントになってたような気がするし。
  • マリウスはグインとすぐに仲良くなった辺りの頃は「コイツがメインキャラのうち読者代表のようなポジションを背負うのかな……」と思ったが、まさかあんな情けない方向にモラトリアム化するとは(汗)。愛のモラルにだらしなかったり、あれこれ言い訳を立てたりするのもしんどいキャラであったが、何よりドン臭い分際で独りで生きたがるのが個人的には同族嫌悪を刺激されるようで今にしてみれば辛かったような。
  • 実はマリウスが1番機敏に動いたのって、初登場時、アストリアス確保に一枚噛んだ時だったんじゃ……。
  • アムブラの弾圧の話は面白かったというよりは、一筋縄ではいかない人物関係が好みであったのだが、全体の筋から見ると果たして必要性のある出来事だったのか?という疑問は残る(汗)。内乱で追い詰められたナリス様「私の仲間たちはどんどん倒されていく」って、アムブラはあんたが滅ぼしたんでしょーーがよっっ!!!「ナリスの代わりにアムブラ中の憎悪を集めるヴァレリウスの苦悩と恍惚」というお膳立ても、作っておきながら、以降は殆ど生かすことなくあっさり「ヴァレリウス=ナリスの股肱の臣」ってバレちゃっうし。ナリス〜ヴァレ〜リギアの三角関係もリギアがあっさり脱落しちゃうしw。結局あのへんは作者がナリスとヴァレリウスの複雑ドロドロなヤ※イ心理劇がやりたかっただけじゃないかなあと……。
  • アムブラ編の頃に出てきたレムス派、ナリス派に告ぐ「第三勢力」魔導師ギルドもその後は機能してるのかしてないのかさっぱりであった……というか、設定も支離滅裂の後出しじゃんけんだらけだったし(;一_一)。なんというか「動けない身でもレムスを差し置きギルドと渡り合っちゃうナリス様流石!」をやりたいがために出したんじゃないかとか思っちゃいました。
  • 実はパロ内乱の真っただ中にアグリッパに会いに行ったのも、現世には何の関心も無いアグリッパがナリスにだけはほんの少し反応を示す場面がやりたかっただけじゃないかと勘ぐっているのだ。
  • 魔導師といえば、キタイ編でグラチーに殺された派遣魔導師たちの伝言をグインがパロに伝えるという約束はどうなったのかしら(*´・ω・)(・ω・`*)ネー。
  • コント兄弟の片割れが毒殺される場面で、ヴァレリウスが毒を入れたあとに何者かがやってきて毒に細工を仕込む展開とか全く関係してこなかった(*´・ω・)(・ω・`*)ネー。
  • いい加減にしないと(*´・ω・)(・ω・`*)ネー。
  • 逆につま……しんどかったのがイシュトヴァーン戦記全般。だって最初から勝つのはわかってるんだもーんw。しかもモンゴールが復興して彼が将軍になったあたりはうだうだ悩む展開が続いて「出世したいのかしたくないのかはっきりせい!」と苛々しながら読んだので別の意味で印象に残っているw。イシュトは外伝は面白かったのだが。ちなみにグインワールドで1番の悪役はコイツであったと個人的には思っとります。
  • イシュトヴァーンといえば(?)アリ。モンゴールの将軍たちを集めて戦略を述べた頃では普通に優秀な軍師であったのに、なぜにいつの間にか2流の策士風に……。イシュトへの妄執も、彼が血まみれの帝王になるところが見たい、むしろ自分が殺される栄誉にあやかってもいいなど、当初はある意味見返りも求めぬ「純愛」であったのが、殺される頃にはあわよくばイシュトをあれこれしたい、パロのアルド・ナリスとも渡り合えるところを見せつけたい等々、俗物の野心家に成り下がってしまったのは心から残念であった。
  • アリといえば、カメロンがマルコを送り込んで来た際には、「コイツは直ぐにアリにとっ捕まってめちゃくちゃひでー目に遭うぞ((((;゚Д゚))))」と思ったもんですが、意に反して最終巻まで出てきてましたな>マルコ。
  • 好きな場面その1。アキレウスさまが「もはやわしは老いた……」と云った直後に、全身全霊をこめてグインにシルヴィア救出を厳命する場面。かっこよすぎだろ!!!グインが相手に圧されてひれ伏したのは後にも先にもこの場面のみ。
  • 好きな場面その2。クリスタルパレスから去るスカールがリギアも連れて行こうとするが、りギアが拒む場面。あの後、スカールが死ぬまでにリギアと再会したのかは結構気になってるのですが……(´;ω;`)。
  • 好きな場面その3。イシュトヴァーンの処遇を巡ってナリスとスカールが互いの義をぶつけ合う場面。具体的どんなことを云ったかは忘れちゃったんだけど、あのナリスがかなり熱血にヤンダルの脅威を訴えてた気がする……(で、ヤンダルと比べたら、イシュトはあくまで無邪気な野心家に過ぎず、スカールの私怨で彼を世界の敵とみなすのはおかしいとか庇ったんだっけ……記憶がアヤシイ)。
  • ナリスがヤンダルと対するのに、やれレムスから王位を奪うとかわざわざ「悪役」のポーズを取らねばならなかったのは、一体なんだったんだとは今でも思う(-_-;)。
  • 好きな台詞その1。「パロのくねくね宴会なんぞに出れるか!」声出して笑ったw。
  • 好きな台詞その2。「なにをおっしゃる兎さん」単にそういうのが好みという設定だから、とされればそれまでだが、ヴァレリウスがリギアを好きになったのは、「そうしないと物語が進まないから」以外の理由が思いつかないw。
  • というかナリスとリンダにも同様の感想だし、実はイシュトとリンダもそういう風にしか感じ取れなかった。
  • ヒいた場面。ハンドブック3で作者に質問状コーナーで「もし無人島にひとつだけ持って行くなら?」「マジでこんな質問してくる人いるんだ……」場面じゃないw。でも正直、こんな返しをするようにはなるまい、と思った。
  • 今度こそヒいた場面。ナリスが死んだふりをした際に、リギアが狼狽する様子を見てヨナが「これだから女は……」みたいな反応をする場面。ヨナってナリスの二代目みたいな扱いだったけれど、場面によって極めて理性的だったり感情的だったり、理想主義者だったり現実主義っぽく描かれたり、ストーリー展開によってキャラクターがブレまくってたような気がする。掴みどころがない、ということだったのかもしれんが。

 (・ε・)むー、もっと色々書こうと思ったけど感想が出てこない。それなりにのめり込んで読んだはずなのだが。「グインが好きだった」「スカールが素敵だった」という感覚は以後も忘れることはなくても、細かい筋立てはもう暫くしたら自分の中から綺麗さっぱり消えてしまうだろう(特に「イシュトヴァーンがどういう順序で出世した!?」とか)。それを懸念して毎巻の感想にあらすじまとめを付記したんだけど。正直、構成フェチの自分としては巻数が進むにつれて、作者が最初に配置した駒の中から愛着のあるものとないものにわけられていくのは哀しかったです(具体例は割愛)。
 これにてこのブログにおけるグインサーガ・マラソンはとりあえず完結とします。このブログでは他にも色々感想録を書いてるんですけど、実は最後まで書ききったのはこのグインが初めてなのでちょっと感慨深いですw。なんか有志による続編刊行も発表されたそうですが、それを読むかどうかは今のところ未定です(その前に「魔界水滸伝」を再開しないと)。アニメは機会があれば観てみたい。スカパーでやんないかな。
 最後に、感想をあげる毎に丁寧な時には率直なwコメントを送ってくださり、私の読書&ブログ綴り意欲を煽ってくださったid:saba2004さんに心よりお礼を申し上げます。また、コメントは書かずとも読み続けてくださった方々にも感謝いたします。栗本薫先生……長生きしていただきたかった(´;ω;`)。