グインサーガの外伝17巻目を読んでみた

 「マグノリアの海賊」の後日談でもある物語なんですね。あんなグイン史上最ものんべんだらりとしていた(と思われる)話の続きが、こんな非情の展開だなんて。イシュトヴァーンに関わると皆ほんとロクな目に逢わないのね(^^;)。

 19にして早くも自前の船を操る少年イシュトヴァーンは、伝説の大海賊が遺した宝を求めて南国の島に上陸した。だが旅に出て数年足らずの彼に、荒くれの海賊達が集う町は手に負えなかった。財宝の在処を知る瀕死の老人からなんとか手掛かりを掴んで逃走したイシュトであったが、海に出た直後に凶悪な海賊団に捕まり、愛船は仲間の少年たちもろとも炎上し海の藻屑と消えてしまう。

 表紙ではかっこよく海の男を気取っているが、身に危険が迫ると仲間を放っておいて*1ランと二人さっさと逃げ出すイシュト……ダメじゃん(汗)。
 カリスマ性はあるけれども、その魅力に惹きつけられて集う人々を引き受ける責任については全くあまり深く考えない男。それがイシュトヴァーン。本編では偉くなって人が変わったと云われまくっているが、基本的に自分のことしか考えないロクデナシなのは10代の頃から一貫……ゴホゴホゴホ!
 残酷な話ではあるけれども、自らの力量を弁えない青二才が悪党のたまり場に飛び込んでいくとまあこういう展開になるわな、と。ストーリー自体に目を見張る点はなく、むしろ刮目したのは占い婆に予言されるシーン。「美しいものと醜いものに気をつけろ」ってのはモロにナリス様とアリのこととして、「3度訪れる悲しみと衝撃」ってのはひとつめがこの話での仲間との別離で、ふたつめがグインとの決別で、みっつめがナリスの死で良いのだろうか?これらを無事乗り越えることができれば幸せになれる、ということは、イシュトヴァーン足りなかったのは洞察力や責任能力より何より図太い心だったのかもしれないな……。
 読み方、意味を調べた漢字。昴然、ぼうぜん?序盤のイシュトとランの会話シーンで幾度か出てくる漢字だが……「昴然と言い放つ」

*1:見捨てて、とは書かないでおく。